交通事故・示談交渉の基礎知識

交通事故の損害賠償。

相手方保険会社から金額が提示されたけど、何がなんだかわからないという方も多いと思います。

そこで、こちらのページでは、交通事故の損害賠償の項目について、弁護士が詳しく解説しています。

 

特に、▼後遺障害等級がついた方や▼交通死亡事故のご遺族の方は、専門のページも作成しましたので、示談書にサインしてしまう前にぜひご覧ください。

交通事故の損害項目

交通事故で被害にあった場合、交通事故の被害者が、交通事故の加害者に対して請求できるのは、以下の4つの項目です。

① 積極損害

ケガの治療費や入通院に要した交通費、入院雑費など、交通事故にあったことにより出費をせざるを得なくなった損害のことです。

② 消極損害

休業損害や後遺障害が残った場合の逸失利益など、交通事故にあったことにより本来得られたはずの利益が得られなくなったことによる損害のことです。

③ 慰謝料

入通院したことによる慰謝料と後遺障害等級がついた場合の後遺障害慰謝料の2つがあります。

 

また、死亡事故の場合は、亡くなった方の近親者にも、近親者としての慰謝料が認められます。

④ 遅延損害金など

「遅延損害金」というのは、交通事故の損害賠償金には、民法上、交通事故の日から年5%の割合による遅延損害金が発生するというものです(民法の改正により2020年4月1日以降の交通事故の場合は、年3%になりました)。


 

以下、①から④の項目について、それぞれ、詳しく見ていきます。

 

 

①交通事故「積極損害」

治療費

入院にかかった費用、病院などへの通院にかかった費用のことです。

 

加害者側の損害保険会社が、被害者に代わって立て替えて支払っているケースが多いようです。

入院・通院交通費

病院へいく際にかかった交通費のことです。

 

電車の場合は実費が、車の場合は移動1キロ当たり15円が通常支払われます。

入院雑費

入院した際にかかる諸費用のことです。

 

保険会社の提示では1100円~1200円程度ですが、裁判基準では、1日1400円~1600円ほどです。

付添看護費

入院中、医師が付添看護が必要と判断した場合(証明書などが発行されます)、損害の項目として認められるものです。

 

また、通院についても付添費用が認められる場合もあります。

将来看護費

重い障害が残った場合、平均余命までの間認められるものです。

 

どのような障害が残ったのか、どのような介護がどの程度必要かなどにより金額が決まります。

装具費など

義足や車椅子などの購入費用です。

その他費用

ケガの程度や入通院の程度により、自宅の改造費や子どもの保育費なども認められる場合もあります。

弁護士費用

裁判にした場合、請求が認められた額の10%(高額な場合は5%)が認められます。

 

よく、「弁護士に支払った費用を加害者側に負担させることができる」などと勘違いしている方もいらっしゃいますが、実際に弁護士に払った金額でなく、あくまで「弁護士費用」という名目の項目ですので、お間違えにならないようにしてください。


②交通事故「消極損害」

休業損害

交通事故によるケガの治療のため、会社や事業を休んだ場合の損害です。

 

給与所得者は事故前の給与額、事業主の場合には前年の確定申告額、家事従事者(主婦)は、女子の平均賃金の額が算定の基礎の額となるのが原則です。

逸失利益

後遺障害等級の認定を受け、将来の労働能力が喪失して将来の収入が減ってしまう場合、その損失分のことを「逸失利益」と言います。

 

等級によって、喪失率が決まっていて、定型的に判断されるのが原則です。


③交通事故「慰謝料」

入通院慰謝料

入院や通院をしたことについての精神的苦痛に対する慰謝料です。

 

入通院の期間によって決まります。

後遺障害慰謝料

こちらは、後遺障害等級の認定を受けた場合、後遺障害が残ったことについての精神的苦痛に対する慰謝料です。

 

後遺障害の等級の認定を受けた場合のみ、等級に応じて金額が算出されます。

死亡慰謝料

交通死亡事故の被害者の方に、加害者側に対する慰謝料請求が認められます。

 

相続の対象となりますので、被害者の方の相続人の方から相手方に請求する形となります。

 

また、相続人の方固有の慰謝料が認められるケースもあります。


▼交通事故の過失相殺と損益相殺

交通事故の賠償金を定める際、過失相殺や損益相殺という聞き慣れない言葉を、相手方損害保険会社が主張することがあります。

 

一言で言うと、どちらも交通事故の賠償金を減らす方向に働く項目です。

交通事故の「過失相殺」

「過失相殺」とは、交通事故が発生したことについて被害者側にも落ち度がある場合、損害賠償額から被害者の落ち度の分だけ金額を減らすというものです。

 

青信号で横断歩道を歩行中の場合や追突事故などのケースを除き、多くの件では加害者側の保険会社がこの「過失相殺」を主張します。

 

過失割合については、どのような事故態様かということについて基本的な割合が決まり、事故の時間帯や被害者の年齢、事故発生場所の状況などにより割合を修正していくことになります。

 

事故の態様については、現場を調べた警察の「実況見分調書」などをもとに判断していきます。

 

ドライブレコーダーなど事故の瞬間を捉えた客観的な証拠があれば、裁判上でも重要な証拠として過失割合の判断材料となります。

交通事故の「損益相殺」

「損益相殺」とは、交通事故に遭ったことについて被害者が何らかの給付を受けた場合、相手方から支払ってもらう賠償額からその分を控除しようというものです。

 

損益相殺の対象となるのは、すでに被害者が受け取った自賠責からの損害賠償額や給付が確定した労災保険金などで、死亡事故の場合の生命保険金や事故によって失業した場合の失業保険などは損益相殺の対象とはなりません。

 

具体的にどのような項目が損益相殺の対象となり、どのような項目が損益相殺の対象とならないかについては、きちんと弁護士にご相談頂ければと思います。


交通事故の被害者は弁護士にご相談ください!

以上、交通事故の損害項目についてご説明差し上げましたが、初めてのことだとわからないことばかりだと思います。

逆にいうと、相手方の損害保険会社は、みなさんがわかりにくいことを利用して、早めに話をまとめようとしてきます

このため、交通事故の被害者の方は、相手方から金額提示があったら、まずは弁護士などの専門家に相談するようにしてください。

 

特に、▼交通事故のケガで後遺障害等級が認定された方や、▼交通死亡事故の場合は、相手方損害保険会社の提示金額が、裁判などで認められる適正な賠償金額に遠く及ばないケースも多くあります。 

その金額が適正か否かについて、交通事故に詳しい弁護士に確認されることを忘れないようにしてください。